合成時によく見かける間違えた使い方に「アナモルフィックレンズ特有の効果」があります。どういうものかずばり言えばレンズフレア。格好いいという理由だけでアナモルフィックレンズ特有の設定を使用しちゃいましたというものです。実際にはアナモルフィックレンズはその特性上、撮影時に厳密にその使用/不使用を決定しているはずなので、不用意に「見た目」だけで使用するとせっかくの選定を台無しにしてしまう可能性がありますし、やっぱり同業者目線で見られたときに恥ずかしい...
アナモルフィックレンズというのは、通常4:3のアクペクト比だった35mmフィルムに横長の映像を記録するために使用されたもので、フィルムの面積を有効に使用するために縦長に圧縮された映像を記録し、劇場の映写機で横長に引き延ばして上映するというもの。もともとは劇場の座席数を増やすために横長のスクリーンが好まれたという事情によるもののようです。
アナモルフィックレンズの基本的な説明は以下のサイトが参考になるかと思います。
cinematography.com - FAQ:ANAMORPHIC LENSES
http://www.cinematography.com/index.php?showtopic=4690
以下日本語版のWikipediaのリンク。もう少し平易な説明があります。
Wikipedia - アナモルフィック・レンズ
Wikipedia - 画面アスペクト比
具体的にアナモルフィックレンズを使用した際の特徴をざっと書き出してみると...
- レンズフレアの横方向への歪み。
- ボケは絞りが開放のとき縦長の楕円形になり、レンズのT値によって比率に変化が生じる
- ボケのフォーカスイン/アウトによる変化
- スリット光の効果による横方向の特徴的なフレア。
- レンズ周辺部の収差
- レンズディストーション
といったものが挙げられます。これらの特徴がないのにレンズフレアだけがアナモルフィックレンズのようになっているとちょっとおかしな画になるというわけです。
もちろん見た目の効果優先でという考え方もあるでしょうが、コンポジッタとしてはこれらを知っていて使用するのと知らずに使用するのとでは意味が違いますし、増してや撮影した側からすれば「とんでもないことをされた」と思われるかもしれません。逆にアナモルフィックレンズで撮影されているにもかかわらず、そこに追加されたVFXがアナモルフィックレンズの特徴を再現できていなければ、とんでもなくおかしなことになります。
映画「StarTrek」(2009)では派手にアナモルフィックレンズのフレアを使用していましたが、背景のボケもアナモルフィックレンズの特徴を再現していますし(合成時にぼかしたのか撮影時にアナモルフィックレンズを使用したのか不明)、細かくみていくとレンズの収差などもCG含めてちゃんと再現されています。あと「Transformers」のメイキングでベイ監督がアナモルフィックレンズを覗いてフレームやレンズ効果を確認している様子が映ってます。
以下にVimeoで観ることのできるアナモルフィックレンズの作例を掲載しておきます。
これはAfter Effectsでのアナモルフィックレンズのフレア作成チュートリアル。実際にどのあたりに注意してフレアを作成しているかというのを上のムービーと比較してみるとわかりやすいと思います。
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