Adobe MAX 2013で新しいCreative Cloud発表

May 7, 2013
昨日(本日未明)開催されたAdobe MAX 2013の基調講演にて新しいCreativeCloudの発表がありました。

Adobe Creative Cloud - お客様へ - アドビからのメッセージ クリエイティブ制作は、新たな時代へ
http://www.adobe.com/jp/cc/letter.html

アドビプレスリリース - アドビ システムズ社、Creative Cloudのメジャーアップデートを発表
http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/20130507_AdobeCreativeCloudMajorRelease.html?sdid=INJUJ

このバージョンアップでAdobeはCreative Suite(CS)シリーズを終了させ、Creative Cloud(CC)シリーズとしてリニューアル。それにともない従来のパーマネントライセンス(永続ライセンス)形式での製品の提供を行わないことを発表しました。

これまでCSシリーズとしてバージョンを重ねて来たAfter EffectsやPhotoshopもCCとしてリリースされ、After Effects CS7やPhotoshop CS7はリリースされません。このCCシリーズがCC2, CC3と言った感じでバージョン化するのか、それともCreative Cloudとしてシームレスに機能を追加していくのかはわかりません。LightroomやAcrobatなどは従来通りの販売が継続されます。ちなみにCCリリース後もCS6のESD版(ダウンロード版)とライセンス版(TLP, CLP)での販売が継続されるとのことですが、5月7日現在日本のアドビストアではCS6のラインナップはすべて買えなくなっています。Amazonなどでは買える状態みたいです。


Creative CloudではCS6以降のバージョンで、以前のバージョンに遡って使用することができるようになるそうです。現状ではCS6しかないのですが、今後CCがリリースされた場合でもCS6が使用可能ということです。また1ユーザーにつき2台までのマシンに同時にインストールして使用できるとのこと。同時使用については禁止されていませんが、ユーザーは同一である必要があります。つまり2人で1つのCreative Cloudのラインセンスを使ってはいけないということ。また1つのAdobe IDで使用できるCreative Cloudは1ライセンスまでとなります。

単一アカウントで複数のライセンスが必要な人(法人)はグループ版にすることでライセンスの追加や移動が簡単に行えるようです。

トータルで考えて損か得かという比較はパーマネントライセンスの提供が廃止されてしまったので意味がありません。CC以降のPhotoshopやAfter Effectsが使用したい場合には、CCメンバーシップ個人ラインセンスで5,000円、PhotoshopとAfter Effectsといったアプリケーション単体の場合にはそれぞれ2,200円が必要になります。尚CCからPhotoshopのExtended版は廃止になり一本化されました。


実は私は既にCS6でCreative Cloudを一部使用していたのですが、インストール先はあくまで補助用のマシン(mac mini)での使用に限定していました。というのもCS6自体それほど出番がなく、業務では他のプロダクションや3DCGIのチームと足並みを揃えるためにCS5.5(個人的にも気に入ってるバージョンです)を使用することが多かったのです。

CS6でもPhotoshopなどでは一部Creative Cloud版でしか使用できない追加機能もあったらしいのですが気がつきませんでした。気がついていたとしても、互換性の問題を避けるために使わなかったと思います。CS6はProduction Premiumも持っていたために、業務でCS6を使用した際もそちらがメインでしたしスクリプトやプラグインのデバッグもそちらで行っていました。そんなわけで私の実質的なCCデビューはこのバージョンになると思います。

Adobeは既存のCSユーザーを切り捨ててCCという新しいバージョンに舵を切りました。クラウド化というと先進的で「正しい」ことのように思いますが、CS6からCCにバージョンアップをする際にユーザーの選択肢が減ったのは間違いありません。新しいライセンス形式がいかに優れているかとか将来性があるかを語っても、従来の永続ライセンスを希望する人にとっては無意味だと思います。

個人的には昨年の改訂しユーザーに発表したアップグレードポリシーを一度も実行しないまま、突如CSシリーズに見切りをつけてしまったのにはちょっと呆れましたし、CS7なりを順当にリリースしつつ次のバージョンからはCCのみだとアナウンスするのが筋なんじゃないかなと思ってます。

CCのライセンス形態は複数のライセンスを使用するには非常に魅力的です。

例えばNukeXの場合、年間の保守料金が16万ほどかかります。元のソフトウェアの価格帯が違うのでこの料金自体を比較するのは無意味なのですが、この保守契約が切れるとそれ以降のバージョンは(マイナーアップデートであっても)使用できなくなります。保守は一度停止してしまうと復活させるために過去に遡って支払う必要があるため複数年にわたって保守を停止したライセンスは復活させる費用が増大します。Adobe CCの場合はこれらの心配なくソフトが不要になったら停止し、必要になったらまた同じ金額で再スタートが可能です。

ただしNukeの場合はパーマネントライセンスなので保守契約していた期間のバージョンはいつでも使用することができますが、Adobe CCの場合は契約が切れてしまうとまったく使用することができなくなってしまいます。

総合的に判断すると私にとっては妥当な金額であり、今までのProductionPremiumのアップグレード料金を考慮すると、すべてのソフトとは言わないまでも常時5種類くらいのソフトを使用したいと考えているユーザーにとってはかなり割安なんではないでしょうか?ただCSシリーズのいきなりの打ち切りやコロコロ変わるアップグレードポリシーなどを見ていると、このCreative Cloudというサービスにどの程度の信用をよせるかはまた別問題のような気がします。

今は製品名にCloudって単語が含まれればなんでも褒めそやす人もいますが(比喩です)、Cloudという言葉を製品に取り込んでしまったことで、この名称自体にいささか刹那的な響きがあるのも事実ですけど。


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