Chapter11申請とかで、なにかと騒がしくなっているKodak社ですが、ちょっと思うことなど書いてみようと思います。昨年末以来ずっと忙しい状態なので、文章のみで申し訳ないんですけど。
Kodakと言えば、私たち業界的にはまさにシネマフィルムの供給源であり、映像制作がデジタル化した後もひとつの技術的な目標だったわけです。フィルムのラチチュードを如何にデジタルシネマカメラで再現できるかとかフィルムによって作られた画にいかに近づけるかというのは、この業界では至極当たり前のように行なわれてきました。
最近の劇場公開作品でも『インセプション』をはじめ多くの作品がフィルム撮影ですし、『ウォーキングデッド』は全編16mm(Super16)です。日本でも私が関わっただけでも昨年は16mmを使用したCMが数本ありました。
で、やたらと言われるのがKodakはデジタル化に乗り遅れて...という文言です。ちょっと私としては引っかかります。少なくともKodakはフィルムを製造し続けたメーカーではありますが、デジタル化への研究も多くなされており、例えばライカがM8/9で採用したのはKodak社のCCDセンサーでしたしデジタルカメラやDVDプレイヤーなどのデジタル家電も販売していました。まぁニュースなんかではデジタル化の波に押し流される某国出版社のような扱いをしたいのかもしれませんが...ちょっと解せません。
Kodakと言えば終身雇用制度が有名ですが、おそらくこの終身雇用によって発生している多くの退職金や企業年金が財政を圧迫し、制度を見直したりレイオフを実施したりした後も負の遺産として会社をじわじわと衰弱させていったのではないかと思います。今の日本企業が陥ってるのと同じ(例えばJALとか)で、日本のマスコミとしては明日は我が身なので「デジタル化の乗り遅れ」ってことにしたくなる気持ちもわかります。
きっとChapter11で民事再生し、この辺のしがらみから抜け出せば、おそらく映画産業向けの分野ではまだ活躍できる企業なんじゃないかと思ってます。PanavisionやARRIがフィルムカメラから撤退という話もありますが、Zeissがフィルムカメラ用にアナモルフィックレンズを復活させたりしていますし、なによりVISION3の画質は素晴らしいです。
そんなわけでKodakは会社の規模や経営母体は変わってもこれからも映像業界でがんばってもらいたいなと思ってます。
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