長らくベータ状態だったJupiter JazzのAtomKraftが1.0となって正式リリースされました。AtomKraftがベータ状態でいる間にNuke自体がPRManをサポートしてしまったりして取り巻く状況がちょっと変化してますが、長らく待たれた3Delightによる3Dレンダリングを可能にするプラグインです。
Jupiter Jazz - AtomKraft
http://www.jupiter-jazz.com/atomkraft
私は来年このプラグインを使用する可能性が出て来たので、ベータ版に続いてプレリリース版が発売された直後に購入して少しテストしてました。ベータ時は実際に業務に使用するにはかなり不安の残る状態だったのですが、プレリリース版のあたりから安定し始め、最近ではかなり安心して使える状態になっていました。
簡単にAtomKraftについて説明すると、AtomKraftでは3Dのレンダリングに3Delightを使用します。通常のNukeのレンダリングは標準のScanline RenderあるいはPRManが使用できます。PRManはPixarから別途購入する必要があり、レンダリングのライセンスもそれに準じた形で使用するのですが、AtomKraftの場合はプラグイン内に3Delightが組み込まれていて(1.0では3Delightバージョン10.0.18)、ライセンスもAtomKraftのライセンスのみでコア数無制限のレンダリングが可能になります。
NukeのScanline Renderでは不可能なセルフシャドウやソフトシャドウも可能になるので、Nuke内での3Dレンダリングの品質や表現の幅は劇的に向上するのですが、私としてはあまり3DCGIの質感やライティングをNuke上で弄ることは少ないと思われます(...というかやりたくない)。普段なんとかやりくりしているハイライトの追加やプロジェクションマップの際のモーションブラーの品質向上には期待してます。
以下がモーションブラーの参考。ちょっと古いバージョンで作ったテストですが。
下が新たに加わったAtomReflectionのテスト。反射のためのAtomReflection、屈折のためのAtomRefractionが新たに加わりました。簡単にリフレクションがとれるようになって便利。レイトレースなのでちょっと重いですけど。
AtomKraftのAtomRenderでは被写界深度も設定できます。私はPeregrine Labsの「Bokeh」が気に入ってるのでdepthのみ引っ張って来て別途Bokehを使いたいところですが、実は「Bokeh」でもRenderMan準拠のボケの設定ができたりするので非常に親和性が高いのではないかと...
Peregrine Labs -Bokeh
http://peregrinelabs.com/bokeh/
Bokehは一人でコンポジット作業を行なうCMなどではすでにかなり使っているので、これもそのうちちゃんと記事にしたいと思ってます(...って散々いいつつ下書きすらまだ書いてないですけど)。ちなみにAtomKraftはまだテスト中で実務では一度も使ってません。
Nukeの3Dレンダリングの品質は格段に向上しますが、操作は確実に重くなりプレビューにかかる時間もディテールを追い込めば普通の3Dレンダリングと同じようにかかってしまいます...普通に3Delightでレンダリングしてるので当たり前ですけど。あと3D関連のノードもNukeの標準のものが兼用できるものと、AtomKraft専用のものでないとうまく動作しないものや品質が落ちてしまうものなどもあるので、既存のNukeの3DシーンをAtomKraftに移行しようとする場合には注意が必要です。サードパーティのプラグインで作成した2Dイメージをテクスチャにしようとしたら落ちてしまうということもありました。
隙をみつけてテストを続けようと思ってるのでまた何か気がついたら書いてみようと思います。とりあえずは1.0リリース記念記事ということで...。
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