月に囚われた男

November 1, 2011
買ったまま放置していたBlu-ray「月に囚われた男」を観ました。全然内容を知らずほぼジャケ買いに近く(たしか何かと一緒にAmazonに注文した)、その後もこの映画のストーリーに関してはまったく予備知識を入れないまま観たんです。最初はコメディなのかと思ってたくらい...

想像以上に面白かったのでちょっと感想を書いてみようと思います。以下ネタバレありですので、未見の方はご注意。とりあえずSF好きにはお勧め。

主人公は月に派遣された、資源採掘場の管理人。3年間の任期で単独で月に暮らしている。一緒に基地を管理するのはコンピューターのガーティだけ。地球の本社からの指示に従って、地球に資源をカタパルトで送出しているというもの。ほとんど密室劇で役者らしい役者は主人公のみ。ガーティの声がケビンスペーシーだけど。

映像特典のインタビューで言われているように、このガーティは「2001年宇宙の旅」のHALを彷彿とさせる描写が多い。ただ映画を最後まで観ると、この作品が「2001年...」ではなく、「月は無慈悲な夜の女王」をベースにしていると思われます。つまり、このコンピュータはHALではなくて「マイク」。あえて監督はそこにミスリードを誘うために、より周知されてるHALを彷彿とする描写を多用して、映画の冒頭では不気味な存在として見せたかったのかなと勝手に想像。

ほかにも「月は無慈悲な...」と共通する項目が多い。本来は自分を監視するための存在であるコンピュータに人格が備わって主人公達に味方してくれるとか、月には豊富な資源がありその資源を地球があてにしているという点や、それに対して奴隷のように使役され使い捨てにされる人達の存在。最後に地球に戻るのに輸送用のコンテナを使用するなどなど。

そして主人公は、自分自身を人間であると信じて写真を集め、偽の記憶を有し、おまけに時限装置付き...まんまレプリカントです。しかも自分が使役される立場でありながら、自分は人間だと信じている様は「デッカート=レプリカント説」に近い。

テーマとしては「自由を求める戦い」っぽくもありそれで間違いではないのだけど、人が科学によって準備万端でコントロールしようとしても、それでも本能的に「知りたい」「行ってみたい」という生物(たとえ人工的に作り出されたものでも)の本能はとめられないものだ...という...これは「ジュラシックパーク」ですね。

と...まぁ、私にとっては色々楽しめる作品でした。密室劇でほぼ一人芝居という低予算ぷりですが、その分セットやミニチュアには非常に手間をかけていて、安っぽさを感じさせませんし。

ただ、ラストで付け足したように地球に「帰還」を果たした主人公(の片割)が、その後なにをしたか説明しちゃってるのはちょっとがっかりした。ハッピーエンドっぽくていいんだけど、無事辿り着いて自分の家族に会ったり旅をしたり、あるいは辿り着けなくて人知れず死んじゃって月ではまた...とか、 色々見る側が想像できる余地があったほうが、見終わったときの余韻がすばらしいものになったじゃなかったかと。

関係ないけど、「月は無慈悲な夜の女王」の新装版の表紙かっこいいですね。個人的には昔の「未来惑星ザルドス」みたいな表紙も好きなんですけど。


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