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私も説明中にうっかりこの言い方を使っちゃって誤解を招いてしまうことがあるのですが、「リニア」という単語に対して「sRGBガンマなのにリニアっておかしいんじゃないですか?」と訊かれることが度々あります。
これは昔のソフトがリニアという単語を間違えて使っていたのかというとそういうわけではありません。
編集機はそもそも専用のフォーマットを使用したり、専用のストレージに映像を(多くの場合はテープ経由で)読み込んで編集を行い、それをテープなどのメディアにプリントして納品あるいはアーカイブするというのが一般的でした。ファイルやデータのガンマを気にすることはあまりなく、内部のデータに直接アクセスしたり他のシステムに持っていくということありませんでした(多くの場合はテープに一度プリントしてから持ち込まれました)。
ですので、リニアであるという状態はすなわち「モニターに映し出された時点」での判断だったわけです。リニアワークフローなどでよく説明されていますが、モニターのガンマの逆ガンマがTIFFやQuickTimeなどの逆ガンマになり、モニターでリニアとして表示されます。ファイルやデータ上のガンマに疑いを持ったりを変更するということはLogでもない限り無かったのです。ちなみにLogも元々はCineonのネイティブガンマでCineonのモニターではリニアで表示されました。
この場合はマスモニに映った時点で「リニア」なので間違っているわけではないのです。CGの人がこれまでTIFFやJPEGなどの画像フォーマットのガンマを疑わず「PCモニターでは正しく表示されるはず」として来ていたのと同じです。
逆に現状ではガンマ1.0にネイティブで対応するモニターはないので(皆無ではないかもしれませんが)、通常はsRGBやRec.709のガンマで見ているわけですが、シーンリニアに対応したシステムはこれらのモニターでリニアに表示するためにこれにLUTをかけて表示しています。
ちなみに家庭用のテレビや劇場の上映システムでは入力信号のガンマと出力(表示)のガンマが逆ガンマではないのでかならずしもリニアではありません。
思いついて書いてる記事なので細かいことは省きますが、明らかにsRGBやRec.709への変換を「リニア化」と表現している時は、「表示の最適化」ぐらいに置き換えて受け取っておくといいんじゃないでしょうか。あるいは明らかにファイルベースでのリニア化と混同してしまってる人もいるので、話がおかしいときはちゃんと確認をとったほうがいいと思います。
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